文庫版 318p
南方熊楠は、柳田国男とともに、日本の民俗学の草創者である。この二人は、その学問の方法においても、その思想的出自と経歴においても、いたく対照的なのである。日本の学問のこれからの創造可能性を考えるために、この二つの巨峰を、わたしたちはおのれの力倆において、登り比べてみることは役に立つであろう。そうした意味で、微力ながら、これはわたしの南方登攀記の発端である。(著者まえがきより)〈昭和54年度毎日出版文化賞受賞作〉
1 南方熊楠の世界
1.すじがき
2.南方熊楠におけるヨーロッパとの出会い
1.学問の目標
2.身についた実証主義
3.問答形式の学問の展開
3.地球志向の比較学の構造
1.粘菌研究−地球志向の原点
2.曼陀羅−比較学のモデル
2 南方熊楠の生涯
1.独創性の根源
1.父母の感化
2.勉強大好き、学校大嫌い
2.漂泊の季節
1.アメリカゆきの動機
2.曲馬団とともに
3.大英博物館入り
4.孫文との出会いと別れ
5.ロンドンの暮しと仕事
6.ロンドンでの仕事
3.紀州田辺の住民として世界へ
1.定住への引力
2.神社合祀反対運動のさ中に
3.柳田国男との出会いと別れ
4.実現しなかった南方植物研究所
5.神島の進講
6.示寂
3 南方熊楠の仕事
1.比較民族
1.『十二支考』について
2.邪視について
3.人柱について
2.比較民話
3.比較宗教−科学論
1.学問の目標
2.比較宗教論
3.科学論
4.エコロジーの立場に立つ公害反対
5.おわりに−南方熊楠の現代性
1.南方熊楠とヘンリー・ディヴィッド・ソローの親近性
2.南方の思想家としての現代性