A5判 182p
「ソテツ地獄」という言葉がジャーナリストによって作られ、日本中に知られるようになってから、長い時が流れている。しかしソテツこそが人々を飢えから救って生き延びさせてくれたものだという意味で「ソテツは恩人」とも呼ばれている。
ソテツを食べた記憶をもつ人々が少なくなり、正しい毒抜きの仕方、おいしい食べ方、年中行事の中のソテツ、琉球王府時代のソテツ政策、空中写真からみたソテツ利用や近代沖縄の新聞、ソテツの美や文化に至るまで幅広い分野にわたりソテツを検証。
奄美沖縄の人々の生活を支えてくれたソテツの賢い利用について、それを利用してきた人々の経験に耳を傾け、安全な食糧による地域自給の確立と地域文化の尊厳の確保という課題に迫る。
●目次
はじめに
第一章 南島の自然と文化
日本のソテツ
暮らしの中のソテツ
奄美・年中行事のなかのソテツ点描
ソテツの三つの毒抜き法
◇コラム◇先史時代のソテツとドングリ
第二章 激動の歴史の中で
琉球王府による蘇鉄政策の展開
「蘇鉄かぶ」のこと ―久米島の古記録から─
◇コラム◇明治中期に田代安定が見た八重山のソテツ
空中写真から復元するソテツ利用
第三章 もうひとつの未来へ
近代沖縄の新聞にみるソテツをめぐる事件
◇コラム◇国境を越えるソテツ
琉球列島の里の自然とソテツ利用
◇コラム◇横井庄一さんを生き延びさせたナンヨウソテツ
ソテツの「美」を愛でる
ソテツ文化の継承──もうひとつの未来へ
資料 世界のソテツ類
あとがき
索引
執筆者紹介