文庫版 288p
今では忌み嫌われるハエやゴキブリ。しかしハエは小さくかわいらしい生き物と見られていた時代があり、ゴキブリは豊かさの象徴だったとする説もある。こうした虫たちは、いかにして人間の手で排除すべき〈害虫〉となったのだろうか。本書はその背景を丹念に読みとき、植民地の統治、「清潔」な近代都市の成立、戦争における伝染病の蔓延や毒ガスの開発などを契機に、近代国家が人々の自然観を組みかえてきた過去を明らかにする。文庫化にあたっては、テクノロジーの発達による害虫の「消滅」などを考察した補章を収録。小さな虫から、人と自然の関係に織り込まれたダイナミックな歴史が見えてくる。